高校卒業式に答辞で語った障害ある息子の感謝と決意の感動スピーチ

障害と共に生きる息子へ

2024年5月 31歳になった息子『R』

先天性ミオパチー 障害1級 

高校で卒業の答辞を読ませていただいたあの日

自分の気持ちを滅多に表すことのない息子のスピーチを今読み返す

高校卒業式に答辞で語る障害ある息子の感謝と決意の感動スピーチ

2012年3月高校卒業式答辞・感謝と決意の感動スピーチ

桜の花もほころび始め寒さの中にも春の息吹が感じられる季節になりました

3年前の4月僕らはこの南高校に入学しました

緊張しながら合格発表の封を開いたあの瞬間を今でも鮮明に覚えています

あの日から今日までこの3年間の経験は僕らを大きく成長させてくれました

僕は体に障害がありますが小学校、中学校と皆んなと同じ普通の学校に通い学校生活を送ってきました

義務教育が終り高校への進学を決めた時、行動範囲も広がる中

身体のことを考えると当初は3年間高校に通うことは無理ではないかと

家族や病院の先生にも言われていました

それでも自分の人生だから後悔しない道を選びたいと思い

自分の気持ちを貫いて

病院に通いながらもほとんど休まずに学校生活を過ごしてきました

僕にとっては1日1日がみんなと過ごせる本当に大切で貴重な時間でした

皆んなと一緒にいたいという強い思いで毎日を頑張ってきましたが

僕1人の力では今日この日を迎えることは到底できなかったであろうと思います

校長先生はじめ先生方、先輩、後輩、そして何より56期のみんながいてくれたおかげです

僕は障害者である事に対して同情されたくないという事もあり

物心ついた時から皆んなと同じようにしたいという気持ちで

周りに自分の弱みを見せずにに頑張ろうとしてきました

しかし南高に来て色々な人と出会い3年間で多くの事を経験したことで

自分の価値観が少しづつ変わりこのままの自分ではいけないと気づきました

以前の僕は街を歩いている時の世間の視線も嫌であまり目立った事をしないようにして

自分を守っていたように思います

でも今は障害があるのも含めて自分だから

障害も自分の個性であると考えるようになりました

今後自立をしていく事を考えると人に頼ってばかりではいけませんが

時には自分の弱みをさらけ出す勇気がなければ

本当の絆や理解というものを得ることができないのではないか

と考えられるようになったのです

また障害があるからこそ分かる事があり

見える事もあるという事にも気づきました

これは僕にしかできない役割もあるのだと信じ

積極的に生きていきたいと思います

この3年間には仲間と過ごした南高ならではの様々な思い出があります

優勝目指した合唱コンクール

ハーモニーが響いた時は皆んなで喜びました

沖縄の大自然の中で初めて長い時間を共にした修学旅行

友達といつまででも話して笑っていられました

円陣を組んで頑張った球技大会や体育祭

僕は応援という形でしか協力できなかったけれど

皆んなの迫力ある勇姿に心が熱くなり

共に感動した事を忘れません

南高生自身の手で創り上げられる南高祭

3年最後のフードバトルはつなぎ服を着て思い切り楽しみました

まだまだたくさんの思い出が今も蘇ります

その中でもクラスのみんなと過ごした日々のたわいない時間が僕はとても好きでした

それら全部を含めて南高で学校生活を送れた事

良き友人クラスに恵まれた事は僕の1番の誇りでありです

色々な事に思い、悩み、つまずき、涙した事もあるのは

僕だけではないと思います

しかしその度に一つづつ壁を乗り越え

僕たちは1回りも2回りも成長できたはずです

在校生の皆さん

今何かに思い悩んでる人がいたとしても

この南高で学べる時間には限りがあります

南高生は向上心が高く素直で優しい人達ばかりです

周りの人に心を開いてみて下さい

自分を信じ有意義な学校生活を送ってください

毎日普通に流れる時間の中

実は大切にしたいものがたくさんあります

その事に気付いて下さい

3年間通うことが無理だと言われていたこの僕が

今日この卒業式にこのような形で言葉を述べ

大学進学も決まってここにいる事など

入学当初は誰にも想像できなかったはずです

僕たちは未来を自分の力で切り開くことができるのです

南高での3年間を通じて

僕はそれを確信しています

南高は今

中高一貫となる新しい局面を迎えています

何事も新しい事が始まる時には苦難や迷いがつきものだと思います

南高の歴史は今迄通り受け継がれていく事を期待していますが

そこに新しい風を取り入れて更に発展していく事を

僕らは陰ながら願い応援していきます

僕の身体は今の所まだ直す術がありません

ですが特効薬は開発されているようです

症例が少ない病気のため

その新薬が手に入るのは

後何年いや何十年かかるのかわかりません

でもそれが手に入らないとしても

僕は変わらず自分を信じ未来を信じ周りと助け合い

前へ向かって進んでいきたいと思います

そして僕たちは南高で学んだ事を力にして感謝の気持ちを忘れず

胸を張って次の新しい世界へ挑戦していく事を約束します

56期のみんなありがとう

2年生、1年生ありがとう

南高ありがとう

僕たちはこれからそれぞれの道を歩んでいきます

先生方初めご来賓の皆様、保護者の皆様

どうかこれからも長い目で見守っていて下さい

最後にもう一つだけ言わせて下さい

お父さんお母さんおじいちゃん

家族がいなければ今日の僕は存在しません

本当にありがとう

僕は生まれてから今日まで後悔してることは何一つありません

これをもちまして「卒業生代表の言葉」と致します

平成24年3月1日

第56期卒業生代表

R.I

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